実績

■季節の写真(過去の写真はこちら写真(C)木原浩

山桜雪嶺天に声もなし 水原秋櫻子



  一昨年,著作権の仕事の関係で女性史研究家・高群逸枝さんの業績を調べた折,その母系社会説が「源氏物語」の実証的な解読に基づいていることを知り,全巻を読んでみようと,毎朝の通勤時に鈍行に座って20分弱を充てています。しかし,英語などの原書よりはるかに時間がかかるので,1年半でようやく半ばに達したところです。

  他方,今年に入ってからは,題名に惹かれて買った竹内洋氏の『革新幻想の戦後史』(中央公論新社)の読後の疑問を解くために,雑誌『世界』の「主要論文選1946~1995」を取り出し,何気なく読んだ加藤周一氏の『言葉と戦車』(68年1月号)の明晰な文章にただ驚嘆。これをきっかけに同氏の大著「日本文学史序説」に挑戦中ですが,わが国の文学史における「源氏物語」の重要性がよく理解できました。

  読書の楽しさは,無関係に読み始めた何冊かが,どこかで交差する発見の喜びでもあるようです。

                                 (2013年3月 岡)