実績

■季節の写真 (過去の写真はこちら写真(c)木原浩

石楠花や雨に削がれし牧の道 皆川盤水


写真家の木原浩先生にアズマシャクナゲの写真をご提供頂きました。


しゃくなげ(石楠花・石南花))を内務省地理局『大日本樹木誌略』(1878)で調べてみると,効用として「印材トナシ櫛ヲ製シ墜子ノ類ヲ作ルヘシ」とありました。墜子(ついし・いわ)は,根付,漁網に付ける重りのことをいうようです。

しゃくなげの印鑑は余り聞かないので印鑑店で調べてみましたが見付かりませんでした。

雑説として「世俗此材ヲ以テ神霊アリトシテ貴重ス故ニ伊予地方ノ俗に裁帛板トナシテ之ヲ用ユル者モ亦此意ナラン但何ニ拠ルコトヲ知ラス」とあります。裁帛板が何のことか調べても分かりません。神霊については記事がありました。

『愛媛県史 民俗 下』(昭和59年)に「四月八日に山に登って花を摘み、天上あるいは山上から神迎えをするために、花を立てて祭る風が近畿地方中心に見られるが、本県にも相似た習俗がある。すなわち大三島町肥海では、この日マルウツギという灌木の小枝を折って来て家の軒に四か所さす。岩城島ではつつじの花をとって来て、墓や仏前に供えている。小田町本川にも同様習俗があるらしく、宇和島市祝森では、権現様のお春祭りなので、鬼ヶ城のシャクナゲをとって帰って苗代や神棚に立てることをする。」

このように,しゃくなげが神性を帯びていたのは確かなようです。

しゃくなげの読みは漢字の石南花が由来のようですが,国譲りの天鳥船神(あめのとりふね)の別名である鳥之石楠船神との類似から神霊があると言われるのかな? と想像しています。

(2021年5月 神戸)